もはや、ハセツネはわが国のトレイルレースの最高峰ではない!~ポスト・ハセツネの模索~


Rolex Cosmograph DAYTONA

その昔(今はあるかわからないが)、monoマガジンという雑誌があって、それでよく腕時計特集をやっていた。
主に、OMEGA や Rolex あたりの腕時計をいろいろと特集していて、さまざまな記事を読むと Rolex だと、写真のDAYTONA あたりが欲しくなるという仕組みで作られた雑誌であった。(注 写真のDAYTONAはいわゆるビンテージものである。)

そのおかげで、日本の正規販売店からDAYTONAは消えてしまい、正規販売店にも入ってこなくなり、正規だと定価が65万円ほどの時計が、並行輸入物で100万円ほどの値段がつけられて銀座や渋谷界隈で売られていた(・・今、現在はどうなっているのか知らない)。

ブームを作り出すそういった雑誌の影響力というものは凄まじいものだ。

読み手をして、Rolex はすごいんだ、DAYTONA 買いたい、Rolex 欲しい!といった願望を抱かせるように記事が作られているのだろう。(脱線するがこういった心理に訴え、心理操作する雑誌のつくり方は、法律的に規制するべきだと考えている。)

数年前に発刊された各種トレイル雑誌もまた、そういった手法で編集され作られたものと考えている。

ア・プリオリに、ハセツネはすごい、日本のトレイルレースの頂点なんだ、という意図的な価値観で持って記事全般が作られて、読み手をして、ハセツネにいつかは出たい! 完走してみたい!! ハセツネを完走できれば人生が変わるんだ!!?  とまで思い抱かせるように仕組まれている。

それは、「いつかは、クラウン」と言う宣伝文句でクラウンを売り込んだ、トヨタの販売戦略にも似ている。

3年~4年ほど前に、トレイル雑誌がいくつか発刊され、トレイルランニングは一種のブームとなり、ロードランナーからトレイルランの世界へ流入する選手がグッと増えた。しかし、その一方で、爆発したトレイルブームに嫌気をさし、ハセツネを以前とは違ってもっと「醒めた目」で眺める立場も生まれるようになってきた。

一昨年、第一回ハセツネ30kの要綱が公表されるあたりから、確実な流れとしてトレイルラン愛好家のブログなどで、ハセツネからちょっと距離を置く立場、冷めた意見が散見されるようになり、今年(正確には昨年暮れ)に至ってはレース主催者自身によって、いわゆるハセツネスタイルに疑問を提起し、もっと違ったトレイルランニングの流れを作ってゆこうという積極的で明確な意見が青梅市トライアストン協会(KFC)によって発信されるに至ったのである(これは後の世にポスト・ハセツネを象徴するエポックメイキングな事実として高く評価されるだろう)。

数年前は、自他共に認めるわが国のトレイルレースの頂点であったハセツネであるが、今はそうではなくなってしまった。ハセツネよりも過酷な内容のレースは、現在国内に5以上あるだろう。運営方法も、ハセツネよりもより選手の身になって、小規模ながら心温まる運営がなされているレースもたくさんある。

ハセツネ自体、これまでは東京都山岳連盟傘下の諸団体のメンバーの善意の協力(ボランティア)のもとになんとか維持運営できたものの、ここに来て、そうではなくなってきている。ハセツネが明確に「トレイルランニングの大会」とされて、トレイルレースの頂点と自認し、登山色を薄めるに従って、岳人の協力は得られにくくなっている。(それは、国体競技からいわゆる山岳縦走競技がなくなったことと軌を一にしている。山岳縦走競技がなぜ国体からなくなったのか、今ひとつ明確ではないが、個人的には、結局陸上競技部出身のランナーが、国体の山岳縦走選手として出場している実態があるので、それでは登山家のための競技ではなくなってしまい開催する意義が失われたからであろうと推測している。名ばかりが山岳縦走で、実際はロードランナーが選手で出ているというわけなのだ。

ハセツネがトレイルレースの頂点としてトレイルランナーの祭典と位置づけられる一方で、トレイルランニング路線の明確化は、これまでスタッフをしていた登山家の、スタッフ離れや、登山家が選手としても参加しなくなるハセツネ離れを招いた。

であるので、実行委員会は、今、スタッフを自前でトレイルランナーから養成して行こうとしている。ナントかマーシャル養成講座とか言う費用二万円の各種講習会は、そういった意味合いがあるのである。(話が脱線するが、そもそも、自前でスタッフを養成するのならば、希望者から参加費用を二万円も取ろうというのはおかしいだろう。スタッフとして働いてもらう見返りに、費用は無償にするのがスジである。)

その一方で、東京都山岳連盟の主管はいわば「錦の御旗」であり、いわゆる裏方の作業・・いろんな交渉をする上で、話を進めやすいし、大会の開催と運営をスムーズに運ぶためにぜひとも必要なので、実行委員会は、東京都山岳連盟からは離れられないのである。その「錦の御旗」をいただく見返りが、ハセツネの参加資格に山岳遭難保険への加入を義務付けて、実質的には、日本山岳救助機構(JRO)に加入することを求めている、あのJROの加入者促進策である。これこそまさに、「バーター取引」というにふさわしい。

ところで、このシステムが働き続けるに一番重要なことは、ハセツネが、わが国のトレイルレースの最高峰であり続けることである。(もちろん、実際そうではなくてもよい、そういう思い込みを選手、スタッフ、わが国のトレイルランニング愛好家が共有していることが必要であり、重要である。)

みんながそっぽを向き始めたら・・、参加者が定員割れにでもなったら、一気にスポンサーも離れて、また当然、トレイルランナーからのスタッフも集まらなくなり、大会運営が経済的にもマンパワー的にも困難に陥ってしまうであろう。もちろん、出なくなった選手からは一旦加入したJROを解約する者が続出するはずだ。

「ハセツネがわが国のトレイルレースの最高峰である」ということは、参加者を集め、JROの加入者を維持する上はもちろん、トレイルランナー出身のスタッフに働いてもらう上でも、またいろんなスポンサーから資金援助を受ける上でも、必要不可欠な大前提(イリュージョン)なのである。

だから、あの公式ホームページを見ると「ハセツネはわが国のトレイルレースの最高峰です」の自画自賛路線で貫かれているのである。(いままで、その自画自賛路線を唯一妨げてきたのが、かの掲示板であり、今回掲示板を閉鎖することにより、ハセツネ・ワールドは完成したのである。)

もはや、ハセツネはわが国のトレイルレースの最高峰ではない」との認識を世のトレイルランナー諸氏が共有するに至るとき。-それは、ポスト・ハセツネの模索と同時進行するだろう-ハセツネは、瓦解するか、こじんまりとした、東京の田舎の山岳レースとして生き残る道を見出してゆくことになるだろう。

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追記

以上の次第であるから、ハセツネのホームページを閲覧するときは、書き手のmagicにひっかからぬように十分醒めた目で見なければならない。

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