トランスジャパン(TJAR)への幾つかの疑問

トランスジャパン(TJAR)への幾つかの疑問

補給について

このレースは、お盆休みの日本アルプスを舞台にして展開されたが、お盆休みの時期は、どのアルプスも登山者がピークを迎える時期であり、山小屋も一番開いている時期である。裏返せば、一年を通して一番、稜線での補給が容易な時期である。

レギュレーション上、小屋での補給について厳しい制約はない様であるが、(極論すると)小屋ごとに、何か飲み物そのほかの食料を調達して補給して先に進むというやり方を許しているのは、私には、このレースの厳しさをいくばくかスポイルしているような気がしてならない。

そういった風に、小屋ごとに何らかの食糧補給をして先に進む、その結果、背負う装備は軽量で済ませることが出来て、早足で歩けて一週間でゴールできるというのであるならば、このレースは謳い文句どおりに確かに距離こそ長いが、実態は「軽装、小屋頼み登山」の延長線上にあるのではないか?といった疑問がわいてくる。

確かに、400キロ以上の行程は、想像を絶しているが、街中で自販機を利用したり、コインランドリーを利用したり、ファミレスや何か深夜営業のお店を利用しても構わないというのは、何か自力本願ではない点で違和感を感じる。そういった現代的な商業施設がもしなかったら、このレースは成り立たないのかな?と感じる。

僕が普段入る山は、アルプスの3000m級ではないけれども、小屋はあまりない、閉鎖されている小屋も多いし、小屋があってもカップヌードルなど置いていないし、小屋の食堂でカレーライスを食べることも出来ない。期待できるのはせいぜい、湧き水があるぐらいだ。それだって、夏場は涸れてしまう事すらある。

また、東京の西にある山梨とを結ぶ国道411号線(青梅街道)で言えば、奥多摩駅から奥多摩湖、柳沢峠を越えて、塩山市に至る50キロほどの区間には、深夜営業のお店はない。コンビニもないし、当然ファミレスもない。せいぜい自販機が点在するのみである。

日本アルプスの山小屋は、あまたの日本の山小屋でもトップクラスの快適さを備えているように思う。今回のレースは、そんなそれこそ、山の中のコンビニとでも表現できるような便利な山小屋があってはじめて成り立つのかな?・・などと思ったりした。

また、街中に下ると、ファミレスや、コインランドリーがあるような、そういった賑やかな町を通過ルートに加えているのかな?とも考えた。

基本的なことであるが、山小屋に頼って縦走するのは、山小屋に頼らないで縦走するよりも容易なやり方である。
荷物だって、山小屋での補給を当てにしないとなると、食料を増やさなければならないし、炭酸飲料だって、山で飲みたいのならば持参しなければならない。
当然、そうなると、荷物重量が増える。5キロでは済まず、10キロ、15キロとなるだろう・・。

そうなると、もちろん歩みも遅くなる。
好天を捉えて、一気に駆け抜けるといった荒業も出来なくなる。

今回トップの選手が、どれほど、山小屋そのほかの既存施設を上手く利用したのかは不明であるが、自動販売機があってそれを利用することを前提にしてはじめて、軽装で速く駆け抜けることが出来た、というのは、あまり威張れた話では無いように思う。

こういったレースは、山小屋もあまりなく、あっても、カレーライスや、コーラなどまず購入できないような鄙びた山域で、そして、里に降りても、コンビニもないような田舎町を通過ルートとして行われるのが、本来的には、その名にふさわしいであろう。

追補

ご存知のように、日本山岳耐久レースは、ノンサポートで、無補給が基本である。これは、想定される状況が、アタックベースキャンプからの山頂往復であるので、基本的に、道中に必要なものはスタート時点で全部持たなければならない。
ヨーロッパアルプスや、ヒマラヤの山頂には、山小屋はないのだ(笑)。
私の頭は、日の出山でのトレーニングから、奥秩父の山や渓谷、日本アルプスでの登山に至るまで基本的に無補給を前提とする登山(山の中で必要になるものは水以外、全部持って入山する)を想定しており実際の登山も山小屋での補給は一切当てにしないようにしているが、これにはこういう理由があるのだ。

だから、山耐のアプローチ(無補給アプローチ)で、トランスジャパンをやっつけようとなると、相当な荷物となるだろう。
スタート地点から、デポ地の市野瀬まで、途中で補給してよいのは、山小屋や、水場で得られる天然水のみ!(コーラもダメ、真水のみオッケー、山小屋で食事するなど当然ダメ)だとしたら、おそらく、荷物重量は、軽く10キロを超えるだろう。

それでも、一週間で駿河湾までたどり着けるだろうか?

昔、ラインホルトメスナーが、モンスーン期のモンスーンが止むわずかの期間を利用して、豊富に積もった雪の上を歩いて単独で、エベレストを往復した。
それに似て今回のトランスジャパンは、天候が安定して、3000mの稜線での気温が高い時期、しかも山小屋が開いており、稜線での物資調達が、一年で一番確実な夏季、お盆の期間を利用して、山小屋での物資補給を大前提に開催されたが、・・何か他力本願のようでおかしいよね・・。

たとえば、開催時期を一月遅らせて9月としよう、そうなると、もう3000m級の山は秋の季節、稜線は氷点下に下がることもある。当然、山小屋だって、お盆の時期ほどには、開いていない。物資調達は著しく困難となる。もちろん、ビバーグもまたしかり、下手をすれば凍死してしまうほどに気温は下がる。

こんな風にちょっと考えると、今の時期に開催されて、山小屋、自販機、ファミレス、コンビニ等での調達を許しているレギュレーションでは思ったよりも容易な内実が見えてきます。

 

もっとも、400キロ以上歩行で移動することは、大変な困難であることに変わりはありませんが・・。

 

 

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